融雪流出量を推定するため、 簡便な積算暖度法から熱収支法に至るまで多くの方法が提案されてきた. ところで、 実際には積雪表面で融雪が生起した後、 浸透を経て底面に達するまでに時間遅れが生じる. つまり、 積雪にも土壌と同様の貯留効果があり、 それは積雪の状態に応じて変化するとみることができる. 本研究においては、 Kondo et. al.によって提案された熱収支法から積雪表面融雪量を推算するとともに、 ライシメータ観測で得られた積雪底面流出量から貯留効果を確認し、 Darcy則に基づく浸透モデルを適用した. さらに、 流域全体の貯留効果については、 次の手段で定式化することを試みた. 1)標高、 斜面方向に応じ、 熱収支法によって積雪表面融雪量を推算する. 2)積雪の貯留効果を積雪深によってパラメタライズする. これによって積雪深に応じた積雪表面融雪量に対する積雪底面流出量を推算する. 3)流域の積雪深は、 後述する「長期水・熱収支モデル」から推算したものを用いる. また、 流出モデルについては、 治水計画や洪水予測といった実用性を鑑みると、 パラメータのチューニングが容易なモデルが有利である. そこで、 水収支を明確にしつつ、 非線形性の強い洪水流出をあらわすために提案された2段タンク型貯留関数を適用する. |