本研究では、 北海道にあるサロベツ湿原を対象に、 湿原域の地下水がどのような条件で維持され、 変動しているかを既報に引き続き明らかにすることを目的とする. とくに、 地下水環境の理解を進めるため、 多雪域の湿原において雪の果たす役割に着目した. ここでは数カ年にわたって実施された積雪調査に基づき、 湿原域では非湿原域より融雪が多いことを明らかにした. 一方、 高層湿原域にある地下水位は1月から3月にかけての積雪期に高いことを見いだした. このことは積雪域の湿原では融雪期だけでなく、 厳冬期における積雪底面からの融雪が大きな涵養源となり、 高い地下水位を維持する要因となっていることを示唆する. とくにサロベツ湿原に広く分布する高層湿原(Bog)の環境は、 天水からの涵養に大きく依存しているため、 積雪の変動は大きな影響を及ぼすとみられる. [*]以上を踏まえ、 様々な要因による湿原の水環境への影響を分析することを目的に、 モデルによる地下水動態の把握を試みた. ここでは湿原内の地下水を不圧地下水として扱い、 2次元非定常モデルに有限要素法を適用して計算を実施する. 一連の解析により、 地下水涵養源としての雪の役割を明らかにした. また、 それをモデル化することで、 地下水への影響要因を分析し、 湿原保全策の検討に生かしていくことができると考える. |