水道水の原水を供給している北海道の漁川ダムではカビ臭の発生が問題となっているが貯水池上流域に特定の汚濁源がなく、その発生機構や対策について解明が待たれていた。漁川ダム貯水池においては1993年頃から顕著にカビ臭が発生しはじめ、これまでの調査によると、湖内の富栄養化によるものではなく、堆砂によって棚状の地形が形成されたことで増殖した放線菌に起因するものと推察されている。漁川ダムにおいては現在、調査結果に基づいて実施された対策事業によりカビ臭の発生が抑制されている。一方、現在カビ臭の発生が問題となっている貯水池に同じく北海道の滝里ダムがある。滝里ダムにおいては2002年よりカビ臭が発生し、その原因は藍藻類の繁殖によるものと推定されている。滝里ダム貯水池の上流域には人為的な汚濁負荷源があって、それが水質悪化の原因と考えられるが、水域は極端に富栄養化しているわけではなく、貯水池のどのような要因がカビ臭発生を助長しているかを解明する必要がある。いずれのダム貯水池も下流地域の水源となっており、地域住民にとってはカビ臭の早期抑制が重要な課題である。 そこで本研究はカビ臭発生に影響する要因として貯水池の形状に注目し、観測結果とシミュレーションを通してカビ臭原因生物の増殖要因について検討を行ったものである。 |