流域規模での土砂輸送モデルは,これまでに橋本ら1)や,市川2)ら等によって研究が行われている.また,斜面の土砂流出モデルについては,裸地からの土砂流出に関する研究(村本ら3),村上ら4))や,土石流堆積物の浸食による土砂生産に関する研究(金屋敷ら5))など様々な研究がなされている.また,Wongsaらは流域全体での流水,土砂輸送の追跡に加え,斜面域での降雨による土砂生産量の算定が可能な物理モデルとして,流域を土砂生産域としての斜面と土砂輸送域としての河道に分けた,流域スケール数値モデル(Wongsa and Shimizu6)等)を提案している.このモデルは,斜面上において物理モデルに基づいた土砂流出量を算出し,河道内において土砂輸送量を算定するモデルである.Wongsaらは,このモデルを用いて,石狩川流域や沙流川流域における洪水ハイドログラフの再現や土砂輸送量の把握を試みている.[*]本研究では,Wongsaらのモデルを北海道日高地方厚別川流域に適用し,同一流域における出水規模の差異によるモデル出力の違いを明らかにすると共に,日高地方厚別川における2003年8月洪水を対象とし,土砂輸送量の把握,斜面域および河道域における,粒径区分別の土砂輸送特性について検討を行った. |