豪雨による斜面崩壊に伴う土砂災害が近年頻発している.豪雨に伴う土砂災害の予測は人的被害を最小限に抑えるためのソフト対策として必要不可欠といえ,こうした背景から,スネーク曲線1),土壌雨量指数2)に代表される防災指標が開発され,土砂災害の警戒避難基準として活用が進められてきた.また,近年の国土数値情報に代表されるDEMやレーダー雨量計の整備が進捗し,50mメッシュの標高データ,レーダーアメダス解析雨量、分布型流出モデル、斜面安定解析を組み合わせた表層崩壊危険度指標の試み3)も報告されている.降雨による斜面崩壊現象を斜面毎に推定する試みは,降雨分布,浸透層厚,飽和不飽和透水係数などの各種因子を広範囲に調査する必要があり,実用レベルまで精度を上げるためには非常に労力がかかる可能性が高い.筆者らは,ここで、統計的アプローチで1kmメッシュ内における崩壊地面積率を推定する手法を提案した.1kmメッシュで平均化した降雨・地形因子と崩壊地面積率との関係を統計的に見出すため,教師データとして,2003年8月に北海道太平洋沿岸にもたらされた豪雨により発生した額平川流域の斜面崩壊地資料,50mメッシュ標高,レーダー雨量計・地上雨量計資料を用い,1kmメッシュ単位の崩壊地面積率の推定式を導いた.この推定式を用いることで崩壊地判読が未実施だった二風谷ダム流域全体の崩壊土砂量・流木発生量と収支の推定を行なった.また,本推定式は降雨指標を与えることで崩壊地面積率の推定を簡易に行うことが可能であり,本イベントで異音が確認された時間帯で,崩壊地面積率がどのように変化したかについても参考まで推定を行なった. |