豪雨により発生した斜面崩壊により,河道に膨大な土砂が流入・堆積する事例が全国で発生している.流砂系の総合的な土砂管理1)を進める上で,斜面崩壊箇所や河道における土砂移動の量と質(粒径分布)のモニタリングは流域土砂動態を空間的・時間的に評価する上で重要であるといえる.近年では航空レーザー測量による土砂動態把握2)なども行われ,豪雨イベントなどにより広域に発生した土砂堆積・侵食状況を短時間に把握できるようになってきたといえる.筆者らの調査している沙流川流域は図-1に示す様に,プレート運動に由来した付加体堆積物,変成岩(蛇紋岩),正常堆積物(白亜紀の蝦夷累層群,新第三紀の堆積岩など)などが混在しており,現地踏査の結果,斜面崩壊形態や土砂移動量は地質に強く影響される傾向がみられている.例えば、基盤岩が白亜紀堆積物(泥岩)の領域では円弧すべり状の斜面崩壊が非常に多く,崩壊した基盤岩が比較的短期間で数mm以下に風化してしまうことなど,リモートセンシング的な調査では把握しにくい特徴が経年的な観察で明らかになっている.筆者らは,付加体堆積物と白亜紀堆積物が混在し,人的な撹乱が少ない総主別川流域において現地踏査を中心とした調査を行い,地質に着目した山地流域特有の土砂生産,土砂輸送の実態について把握した結果をここで紹介する. |