a)目的[*]滝里ダムでは、2002年から04年にかけてカビ臭である2-MIB濃度が閾値を越えた一方、05年及び06年は2-MIB濃度は低く推移し、カビ臭発生状況は年により異なっている。2-MIB濃度は藍藻類であるフォルミジウムテヌエの増殖と強い関連がみられる。一方、カビ臭発生時期である夏季の気象条件(気温、日照時間等)と2-MIB濃度には明瞭な関連は見られず、カビ臭を引き起こす因子(トリガー)については現段階では十分に解明できていない。本研究では様々な条件下で藻類増殖試験を行い、藻類増殖やカビ臭発生の引き金となる要因を検討し、カビ臭発生メカニズムを解明することを目的としている。[*]b)内容[*]まず出水時の河川水がダムに流入した場合を想定した試験を行う。出水時に採取したダム流入河川水から分離したSSを湖水に加えた培地でフォルミジウムテヌエ単種の増殖試験を行い、出水時のSS成分が湖水に与える影響を検証した。また現地湖水を対象として、水温、N/P比による藻類、カビ臭増殖能力の違いを把握するため、混合藻類増殖試験を行った。その際、試験開始後に水温や栄養塩濃度を変動させた場合の試験も行い、藻類増殖時に培養条件が変化した場合の増殖特性把握を試みた。[*]c)得られた成果[*]単種藻類増殖試験では、フォルミジウムは流入河川水SS中のリン濃度が高い場合に、高い増殖能を示した。湖水自体の藻類増殖試験では、全般的にN/P比が低いケースでフォミジウム増殖が顕著であった。一方、カビ臭発生時の現地湖水ではN/Pが比較的高い条件でフォルミジウムが増殖している。今後はフォルミジウム増殖能が高いと考えられる夏季の湖水で藻類増殖特性を把握し,N/P比以外に栄養塩の形態等も考慮し、藻類増殖因子の検討を行う必要があることが示唆された。なお増殖試験の途中で栄養塩濃度、水温を変化させたケースでは有意な差は見られず、藻類増殖能力は対数増殖期の環境に支配されることが伺えた。 |