旧川や湖沼等の閉鎖性の強い水域では,有機物や栄養塩を含む微細な土粒子が堆積し,それらが風等の外力により巻き上がることで水質に影響を及ぼすことが知られている.本研究で対象としている茨戸川も石狩川の旧川であり,季節風による底質の巻上げが栄養塩の主たる供給源であることが報告されている.[*]これら閉鎖性が強い水域の水質予測の精度は,底質の巻上げ及び沈降量の評価により大きく影響されるため,底質の巻上げ及び沈降現象の適切なモデル化が重要である.底質巻上げ量の算定精度は懸濁粒子の沈降速度に大きく影響を受ける.しかし茨戸川の懸濁粒子の沈降速度は,通常の土粒子を想定したStokes則と比べて非常に遅い.そのため懸濁粒子の沈降速度の評価には,土粒子を想定したStokes則と異なるアプローチが必要となる.[*]本研究ではまず沈降試験を行い,土粒子を想定したStokes則に従わない懸濁粒子の沈降速度について,粒径を考慮したモデル化を試みた.また作成した沈降モデルを水質計算に組み入れ,その妥当性を検証した.[*][*]本研究で得られた主な結果を以下にまとめる.[*]・SS沈降試験及び画像解析による個別粒子追跡により沈降速度及び見かけの密度を算出した.沈降速度,密度ともに粒径と相関が見られるが,試験法によりその特性は異なる.[*]・粒子沈降速度のモデル化を行った.粒径別に土粒子のStokes則に従う砂分以上の粒子,土粒子のStokes則より遅く沈降するシルト成分,沈降せず浮遊するシルト・粘土成分の3種類に粒子を分類した.[*]・上記沈降モデルを用いた水質計算を行った.長期的なSS変動は概ね再現できた.一方クロロフィルが高い7月は,SS変動が十分捉えられなかった.[*][*]本研究の成果は,旧川をはじめとした有機物を多く含む底質が堆積した閉鎖性水域における水質予測の精度向上に資するものと考えている. |