サロマ湖では,過去に多発していた湖内への流氷流入によるホタテなどの養殖施設の被害を防止するために第1湖口および第2湖口においてアイスブームが設置されている.このうち第2湖口の水路の側壁に用いられている鋼矢板およびその水路に建設されている橋梁の橋台を保護している鋼管矢板などの劣化が確認されている.第2湖口では非常に早い潮流が発生し,特に湖内が結氷していない状態では流氷の移動が非常に活発となる.流氷の衝突によるものと思われる変形・へこみや,摩耗などが確認されている.さらに,貫通孔や開孔腐食が認められているが,これは腐食によって劣化した材料に流氷が作用した結果とも考えられるし,また流氷の作用が腐食を促進したとも考えられる.結局、これらの損耗・劣化は流氷の関与が高いと考えられ,何らかの対策が望まれている. 変形,摩耗,腐食などの構造物の劣化は,流氷による静的および動的な作用力や接触圧に依存し,またそれは構造物の形状により大きく異なるものと考えられる.材料自身の対策工のほか,構造物の形状・配置を工夫することにより氷の接触力・圧力を軽減させ,劣化を抑える事に寄与できるとも考えられる.[*]本報告では,氷による構造物表面の損耗・劣化のメカニズムを概説し,これらの国際的研究を概観した.また,DEMを用いた数値実験により,サロマ第2湖口における橋台(鋼管矢板)や護岸鋼矢板のといった護岸の形状が海氷による壁面への接触力・接触圧力に与える影響の簡易的評価を行うとともに,構造上の弱点を概略的に把握する事を試みた. |