本研究は,堰堤工作物袖部の水通し袖部を貫通させて魚道が設置された場合を対象とし,水制設置位置や長さの違いによって生じる魚道流入口上流部での砂礫の移動形態,流木の流下状況について検討した.[*][*]本研究の特徴は,予備実験(固定床)において,流量変化に伴い魚道断面が水没する過程で,魚道流入口を通過する流量割合は大きく減少することを見出し,流量変化に対し,魚道流入口が水没しない開口構造(ここでは(H-s)/h=1.00)で本実験を実施したことである.[*][*]本研究で得られた主な結果を以下にまとめる.[*](1)水制設置位置L/bに対する魚道流入口上流部での砂礫の移動形態について示した.特に,水制設置長(l-ba)/b=2.0の場合,L/b=1.5とL/b=4.5を比較すると魚道流入口上流部での砂礫の移動形態は大きく異なり,L/b=1.5の場合,魚道流入口上流部において,砂礫が堆積しないことが明らかとなった.[*](2)水制設置長(l-ba)/bに対する魚道流入口上流部での流況特性および流木模型の流下状況について示した.特に,(l-ba)/b=2.0で水制設置位置がL/b=1.5の場合,魚道流入口上流部に向かう表面流速ベクトルはほとんど確認されず,流下させた3本の流木模型はすべて堰堤工作物水通しを流下することが明らかとなった.[*][*]以上のことより,堰堤工作物袖部を貫通させ設置された魚道において,①洪水時に魚道流入口断面を水没させない開口構造とすること.②水制設置位置を魚道流入口の幅bに対する相対的な水制設置位置L/bを1.5程度とすること(水制を堰堤工作物袖部から魚道流入口断面幅の1.5倍程度の距離に設置すること).③水制先端を堰堤構造物袖部の先端と同一線上に配置することは魚道上流部の土砂や流木の堆積を軽減する上で重要であることを示した. [*]これらの結果は,土砂や流木が魚道上流部に堆積しにくい適切な魚道流入口上流部構造設計に対し有効な知見を提供するものと考えられる. |