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発表 道路の切土のり面への中低木緑化と樹種選定について

作成年度 2010年度
論文名 道路の切土のり面への中低木緑化と樹種選定について
論文名(和訳)
論文副題
発表会 平成22年度年次技術研究発表会(土木学会北海道支部)
誌名(No./号数)
発表年月日 2011/02/05
所属研究室/機関名 著者名(英名)
道央支所横山 博之(YOKOYAMA Hiroyuki)
地域景観ユニット松田 泰明(MATSUDA Yasuaki)
抄録
1.はじめに[*]道路審議会答申(1999)では、道路のり面や中央分離帯を樹木により緑化する基本方針が示された。また、平成7年10月には生物多様性国家戦略が制定され、およそ5年毎に第2次・第3次と制定され、地域の生態系に配慮した土木工事がますます求められるようになってきている。[*]本論文では、北海道の道路の切土のり面への中低木導入の有用性と樹種選定についてとりまとめた。[*][*]2.道路の切土のり面への中低木導入について[*]樹木の根は根張り空間が大きく強靱なため、防災面から道路の切土のり面の木本緑化は有効である。[*]しかし、切土のり面で採用されることが多い1割2分(39.8°)の斜面勾配で樹高10m以上になる高木を導入すると、根張り空間が十分には取れず、将来生育基盤が不安定になる恐れがあるので、一般的には高木導入は望ましくないと考えられる。[*]一方中低木を導入した場合、樹高が低いので将来的に生育基盤が不安定になる危険性は少ないので、伐木の必要性も少ない。したがって、1割2分程度の切土勾配では中低木を導入することが望ましいと言える。[*]樹木の苗は活着に約6ヶ月かかるとされている。このため積雪寒冷地での樹木導入で一般的な、盆明け直後から工事を実施すると、根が不完全な状態で冬を迎えてしまい、積雪グライドで苗がずれ落ちてしまう可能性が高い。したがって積雪寒冷地での木本導入では、苗が休眠している晩秋~初冬期に植栽工事を実施することが望ましい。[*]切土のり面への中低木導入では、これまでの施工実績から、中低木を確度高く導入可能な『苗木設置吹付工』が有効である。さらにこれを補完する意味合いで植生基材に木本種子を混入する『播種工』を組合せ、草本との競合を極力避けるため苗周りにはマルチング(最低50cm×50cm)を施すのが良い。[*][*]3.積雪寒冷地での木本導入に必要な条件[*]45°の勾配では積雪の移動速度が40°以下の勾配に比べ格段に大きくなるので、積雪寒冷地で樹木導入するには40°(1:1.2)以下の勾配が適当である。[*]樹木の苗は活着に6ヶ月程度かかるとされているので、積雪寒冷地での木本導入では晩秋~初冬期に植栽工事が望ましい。[*]40°程度の勾配に高木を導入すると将来植生基盤が不安定になる恐れがあるので、中低木導入が望ましい。[*][*]4.北海道の各地域に応じた中低木樹種の選定[*]樹木は地域による自生に相違があり、また市場での流通がないものが多いので、植栽計画時の樹種選定には苦慮する場合が多い。そこで、植栽計画時に適切な樹種選定ができるよう、これまでの調査・研究や施工例から、25樹種を選定し、表にとりまとめた。樹種選定にあたっては、次の指標に基づいた。・地域に自生している樹種、好陽性または半陰性の樹種、こぼれ種や地下茎などで増殖しやすい樹種、雪崩抑制効果を考え2m以上の樹高がある樹種、苗や種子に市場性がある樹種。[*]各樹種の自生状況の確認は、一般的な文献では北海道全域、北海道南部程度の記載しかない。このため、一般的な文献を見ただけでは、北海道の地域に応じた樹種選定は困難である。そこで、各樹種の分布状況は、道内にある大学や研究機関に保存されている植物標本の採取場所をデータベース化されたものが公開されているので、これを基に判断した。[*]表のURLを参照すると、各樹種の分布状況のデータベースを閲覧することが出来るようになっている。[*]表の活用により、市場性も考慮した地域の自生種(地域性種苗)を用いた切土のり面への樹木選定が容易かつ確実になる。[*][*]5.木本緑化と適用するのり面緑化工法の選定について[*]国土交通省では、新技術の活用のため、新技術に関わる情報の共有及び提供を目的として、新技術情報提供システム(New Technology Information System : NETIS)を整備しており、インターネットでも情報を公開している。[*]切土のり面緑化する場合、道路土工指針では土壌硬度27㎜以上の場合、近年はNETISに登録されている工法が使われる事も多いが、木本導入に適したのり面緑化工法の選定の際の留意点は以下なので、このような工法を採用すると良い。[*]・降雨に対する耐浸食性が高いこと[*]・木本緑化に適した基材の栄養配合がされていること[*]・土壌微生物菌の活用[*][*]6.現場への適用例[*]表を活用し、道央圏の海岸地域で現場対応した例を示す。この例では地域に応じた5種類の中低木を苗木設置吹き付け工で、エゾヤマハギを播種工で導入し、衰退しやすい外来草本種を必要最低限配合した。現場は強アルカリ性土壌を含みラス網上の緑化も必要であったので、これらに対応可能で土壌微生物を活用し、2層吹付可能なNETIS登録緑化工法を採用した。2層吹付工法は種子が貴重な場合等に有利な方法である。[*][*]7.まとめ[*]本論文では、北海道の道路の切土のり面に適した中低木25樹種を選定し、地域や現場状況に応じた樹種選定方法について述べた。樹種の選定表では、実際の樹木の自生状況を基に作成された『FLORA OF HOKKAIDO』Distribution Maps of Vascular Plants in HOKKAIDO、 JAPANを参照できるようになっているので、地域の生態系に近い樹種選定が可能になっている。[*][*]8.おわりに[*]環境や景観との調和が求められる今後の道路工事では、中低木緑化が求められる事も多いと考えられる。[*]今回報告した北海道の道路のり面に適応する道内産緑化樹木(中低木)の生育特性一覧表によって、道路の切土のり面への中低木導入の普及につながることを期待する。
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