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発表 美利河ダムにおけるサクラマスの遡上行動

作成年度 2011年度
論文名 美利河ダムにおけるサクラマスの遡上行動
論文名(和訳)
論文副題
発表会 平成23年度日本水産学会北海道支部大会
誌名(No./号数)
発表年月日 2011/11/25 ~ 2011/11/26
所属研究室/機関名 著者名(英名)
水環境保全チーム林田 寿文(HAYASHIDA Kazuhumi)
北海道栽培漁業振興公社新居 久也(NII Hisaya)
北海道大学環境科学院三好 晃治(MIYOSHI Koji)
北海道開発局羽山 英人(HAYAMA Hideto)
北海道大学環境科学院上田 宏(UEDA Hiroshi)
抄録
【目的】北海道南部を流下する一級河川後志利別川は、サクラマス(Oncorhynchus masou)が産卵のために遡上する河川として知られている。そのため、後志利別川の上流に位置する美利河ダムにはサクラマスなどの回遊魚を対象とした日本一長い魚道が設置されている。これまで、ダムまでの河道や魚道内のサクラマスの遡上調査として産卵床調査などが行なわれてきたが、今後はサクラマスの遡上環境の改善に向けた提案を行うため、より詳細な遡上行動データの蓄積を行うことが必要である。本研究では、サクラマスの位置を即時に特定出来る電波発信機と、事前に設置した受信機付近を通過した時の時間を記録する超音波発信機を両方装着し、ダム堤体直下から発電放流口における減水区間(延長約6.7km)および魚道内(延長約2.4km)における遡上行動の解析を行った。特に魚道内では電波発信機のうち筋電位(electromyogram: EMG)発信機を用い遡上・定位状況を把握するとともに遊泳能力の推定も試みた。また、サクラマスの遡上期である9月13~21日に減水区間の水深増加を目的としたダムからの弾力的管理放流を行った。[*]【方法】2011年8~9月に後志利別川に遡上したサクラマス31尾を捕獲した。発電放流口付近で採捕された18尾は弾力的放流前後の行動把握を行うため、MCFT2発信機(MCFT2-3EM;Lotek社)を外部装着した。魚道付近で採捕された13尾は魚道内における遊泳速度や定位状況を把握するため、EMG発信機(CEMG2-R11-35;Lotek社)を外部装着した。電波受信機(SRX_600;Lotek社)を用いて、EMG・MCFT2発信機から発信される電波により、供試魚の河川内位置情報およびEMG情報を取得した。超音波発信機(V9-2L-R64;Vemco社)は全供試魚に外部装着し、ダム堤体直下から発電放流口までの減水区間に6か所、魚道内(最上流・中間・最下流)に3か所設置された受信機(VR2;Vemco社)により通過時の信号を取得した。[*]【結果】最終的なサクラマスの遡上位置を確認した結果、魚道をすべて通過しダム上流のチュウシベツ川まで遡上した供試魚は7尾(魚道放流5尾、放流口2尾)、魚道内に2尾(魚道放流1尾、放流口1尾)、減水区間に10尾(魚道放流6尾、放流口4尾)、発電放流口下流に11尾(魚道放流3尾、発電放流8尾)、不明1尾であった。供試魚の行動は大きく分けて、①行動開始後、一気に上流へ遡上する個体、②行動開始後、一気に下流へ降河する個体、③減水区間と魚道の往来を繰り返す個体とに区別できた。また、弾力的管理放流中に減水区間を遡上した供試魚は9尾確認された。個別の供試魚の行動としては、魚道内で3週間同じ箇所に定位後、チュウシベツ川へ遡上した個体が確認されたほか、約8時間、3日間、14日間魚道内に定位した後、上流へ遡上した個体が確認された。以上の結果、弾力的管理放流がサクラマスの遡上意欲を向上させた可能性、および魚道はサクラマスの遊泳能力内において遡上・休息等の選択性を与えていることが考えられた。
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