【目的】北海道石狩川はシロザケ(Oncorhynchus keta)が産卵遡上する河川として知られている。石狩川の横断工作物には魚道が設置されているが、シロザケ親魚の遡上にどのような影響を与えるか不明な点が多い。石狩川旧花園頭首工(深川市)には左右岸に新旧2つの魚道があり、新魚道の下流側入口は魚類が見つけやすい構造になっている。本研究は、旧花園頭首工魚道の機能検証を目的に、シロザケに発信機を装着するバイオテレメトリー手法を用いた遡上行動調査を行った。[*]【方法】2011年10月、石狩川に遡上したシロザケ14尾を捕獲した。新旧魚道の選択性を調査するため、7尾はMCFT発信機(Lotek社)を装着し、頭首工下流より放流した。新魚道内での遡上状況を調査するため、7尾はEMG(筋電位)発信機(Lotek社)を装着し、新魚道の下流プールに放流した。電波受信機(Lotek社)を用い、両発信機から発信される供試魚の位置情報およびEMG値を取得した。超音波発信機(Vemco社)は全供試魚に装着し、各魚道の上下流の合計4か所に設置された超音波受信機(Vemco社)により魚道進入時と魚道遡上完了時の個体情報と時間を取得した。[*]【結果】旧花園頭首工下流からシロザケを放流後、7尾のうち3尾が新魚道を選択遡上し、4尾が降下した。魚道に到達した3尾は3~56時間かけて魚道遡上を完了した。新魚道内の下流プールに放流した7尾のうち4尾が魚道の遡上を成功させ、3尾が降下した。遡上の成功個体と失敗個体でEMG値を比較すると、遊泳力を必要とする隔壁遡上を行う前に、筋肉を十分休ませている個体は遡上に成功することが明らかになった。旧花園頭首工において、シロザケは新魚道の入口を発見しやすく、効率的な遊泳が可能である個体は、遊泳能力内で新魚道を遡上できることが検証された。 |