1950年代以降,全国的に顕著な海岸浸食が指摘されており,海岸地形や砂浜,生物の生息場を長期的に保全するために,土砂の量だけでなく粒径を考慮した,山から沿岸まで一貫した流砂系の総合的な土砂管理が求められている(磯部,2013).近年になって河川上流域から海域まで一貫した研究事例が見られるようになったが(たとえば佐藤ら,2014),一般化されるほどの知見は蓄積されていない.
流砂系の観点から長期的な海岸保全策を目指すためには,海岸土砂の粒径特性について時空間変動を把握し,その土砂の生産源を把握することが重要となる.流砂系における海岸土砂の生産源推定には,トレーサとして鉱物組成が一般的に用いられてきたが(たとえば山本ら,2001;福山ら,2003),推定される生産源情報は定性的な記載にとどまっていた.一方Mizugakiら(2012)は,岩石由来の放射性同位体をトレーサにすることで,浮遊土砂の生産源を地質(岩石)別に定量評価できる手法を構築した.この手法を用いることで,海岸土砂の生産源を明らかにできる可能性がある.
本研究の目的は,海岸土砂の粒径特性とその時空間変動特性,また流域における生産源を明らかにすることである.北海道南部の鵡川河口域を含む海岸を対象に,粒径特性をモニタリングし,粒径と波浪・河川流量との関係について統計解析により検討した.また,放射性同位体トレーサを用いて土砂生産源の推定を行った. |