港湾・漁港施設などの沿岸構造物には、本来求められる機能に加えて周辺の自然環境と調和した施設整備を行うことが強く求められている。平成13年6月26日に閣議決定された「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(骨太の方針)では、21世紀の我が国経済の発展に明確に寄与すると見込まれる重点事項として『循環型経済社会の構築など環境問題への対応』が盛り込まれた。その対応に対して国土交通省港湾局では、『環境配慮型の港湾施設整備の推進』を一つの課題とし自然と生物に優しい環境に配慮した港湾施設整備を進めることとしている。北海道開発局においては、水生生物と物理環境の関係に関する現地調査や実証実験を全国に先駆けて取り組とともに、平成4年からは水産生物増殖型構造物開発調査検討委員会を設置して9年間にわたり自然環境と調和した構造物についての調査研究を進めてきた。釧路港西港区島防波堤は、平成10年6月に直轄事業として全国で初めてのエコポートモデル事業に認定され『自然調和型防波堤』として整備されることとなった。本計画策定にあたっては浚渫土砂のリサイクルを図り、土砂処分費の低減や背後盛土の滑動抵抗力による堤体幅の縮小など建設コストの縮減に努め、さらに大規模背後盛土『エコグラウンド』の水深を藻場生息環境に対して満足させることにより多様な生態系の創出を提供することとした。平成12年度の本研究では、防波堤の設計コンセプトを整理するとともに、エコグラウンド部の被覆材の安定性及び耐震性を模型実験により検討し、基本断面の設計法を提示した。今年度は、エコグラウンドの形状が越波伝達波率に与える影響を2次元水理模型実験により明らかにするとともに、海藻の遊走子が基質に着生する際の障害になると考えられている浮泥の制御について実験的に検討する。また、実証試験区間の実施にあたっては、①エコグラウンド部地盤強度特性の確認②浚渫土砂投入時の汚濁拡散状況のモニタリング③裏込部に敷設する防砂シートの規格選定や防砂シート下面均しの必要性の検討④固化処理土の吸い出し防止材への活用の施工上の課題について検討するものである。 |