防波堤基礎マウンド部の安定は防波堤全体の安定性に影響する重要な問題である。そのため、基礎マウンド部の耐波安定性については多くの研究が行われてきた。例えば谷本らは不規則波を用いた系統的な水理模型実験から、港外側被覆材の安定質量算定法を提案しており、高橋らは谷本らの算定法を波浪の入射角の影響を考慮した式に拡張している。このように港外側被覆材については多くの研究がなされているのに対して、港内側の被覆材については経験的に港外側の0.5倍や0.25倍の質量を用いており、適切な質量の算定が難しい。近年、防波堤の背後に水深の浅いマウンドを設ける背後マウンド構造が注目されている。この構造は、防波堤の背後に水深のマウンドを設けて、マウンド上において水性生物の生息に適した環境を創り出すことができる。また、背後マウンドによって堤体の安定性を向上させることも可能である。しかしながら、越波水の打ち込みに対して背後マウンドを守るためには、適切な質量の被覆材でマウンドを被覆しなければならない。早川らは直接数値計算によって越波水の打ち込みによる港内側の流体運動を明らかにするとともに、港内側被覆材の質量算定法を提案している。しかしながら、消波ブロックで被覆した場合の安定性の違いや被害の発生個所については明らかにされておらず未解明な点が残されている。そこで本研究では、不規則波を用いた水理模型実験により、港内側マウンド被覆材に作用する流速特性および被覆材の耐波安定性について検討するとともに、越波水の打ち込みモデル化してマウンド上において最も被害の発生しやすい位置の算定法を提案するものである。 |