我が国の浅海域における防波堤構造は、防波堤の前面に消波ブロックを設置して波力、反射波および越波を低減する機能に優れている消波ブロック被覆堤が主流である。しかしながら、最近では大水深高波浪海域に防波堤を建設する例が多くなり、このような海域に消波ブロック被覆堤を建設した場合、消波ブロックの重量が大きく、かつ多量に必要となり、施工性が悪く、また、建設コストが増加することが考えられることから新形式の防波堤が開発されるようになってきた。数多くの新形式防波堤が開発されているが、大水深、高波浪域への対応として現在実用的といわれているのは、直立スリット堤と上部斜面堤である。しかしながら、直立スリット堤を大水深、高波浪へ適用した場合は、強大な波力に対するスリット部材の耐久性が課題となる。一方、上部斜面堤は上部工として波力を減少させるための斜面を有しているものであり、斜面に下向きに働く力が揚圧力を相殺してケーソンの安定性を高めるものである。斜面スリット堤はこの両者の機能を有した新形式の防波堤として開発されたものである。平成12年に福島漁港の外東防波堤において斜面スリット堤を2函据付け、波圧計および揚圧力計を取りつけ現地観測を行った。本報告は、水理模型実験を行い、斜面スリット堤の設計法について検証を行うとともに、現地の斜面スリット堤に取りつけた波圧観測結果を示す。 |