近年、地球環境の良好な保全が求められる中、港湾・漁港構造物などの沿岸構造物においても多様な生物が生息できる良好な環境の保全や再生への取り組みが求められている。平成14年12月11日に成立した「自然再生推進法」の基本理念においても自然再生は、健全で恵み豊かな自然が世代にわたって維持されるとともに、生物の多様性の確保を通じて自然と共生する社会の実現を図り、あわせて地球環境の保全に寄与することを旨として適切に行わなければならないことが定義されている。また、国土交通省港湾局では、"環境配慮型の港湾施設整備の推進"を一つの課題とし自然と生物に優しい環境に配慮した港湾施設整備を進めることとしている。釧路港西港区島防波堤は、平成10年6月に直轄事業として全国で初めてのエコポートモデル事業に認定され"自然調和型防波堤"として整備されることとなった。本計画策定にあたっては浚渫土砂のリサイクルを図り、土砂処分費の低減や背後盛土の滑動抵抗力による堤体幅の縮小など建設コストの縮減に努め、さらに大規模背後盛土"エコグランド"の水深を藻場生息環境に対して満足させることにより多様な生態系の創出を提供することとした。平成12年度の本研究では、防波堤の設計コンセプトを整理するとともに、エコグラウンド部の被覆材の安定性及び耐震性を模型実験により検討し、基本断面の設計法を提示した。平成13年度は、エコグランド形状が越波伝達率に与える影響を把握するとともに、海藻遊走子の着定障害となる浮遊砂の払拭効果を検討し制御方法を整理した。また防砂シートの規格選定や浚渫土砂投入時の汚濁拡散等、施工上の課題を検討し施工計画をまとめた。今年度は、実証試験区間(1段目及び2段目試験構造)の評価及び課題整理を行い、エコグラウンド防波堤の設計・施工法を検討する。また、適正な藻場部基質の材質・形状を検討するため、浮遊砂の払拭と波浪との関係を整理し取りまとめるものである。 |