平成17年1月17日をもって阪神・淡路大震災10周年を迎える。この都市直下型大震災は、土木及び建築構造物における耐震性能の考え方に新たな局面を与えた。土木学会は、「土木学会耐震基準等に関する提言」として第1回(平成7年5月23日)を初めとして第3回までの提言を行い、耐震設計に考慮する地震動として、海洋型地震や直下型地震動であるレベル2地震動を含む、2段階の地震動を考慮することが提言された。しかし、その後も地震津波災害は跡を断たず、平成16年を振り返ってみても、新潟県中越地震や、インドネシアのスマトラ島沖地震で大災害が発生したことは記憶に新しい。このような被災時において、港湾は経済活動として物流拠点機能を有すると共に災害復旧活動の拠点となることから、港湾施設の耐震性能の確保は極めて重要な課題である。一方、港湾施設における地震被害に着目すると、港湾施設の被害のほとんどは埋立て地盤の液状化現象に関連している。こうした港湾施設における液状化被害への対応として、北海道開発局では、釧路沖地震(1993)や東方沖地震(1994)における重力式岸壁の被災事例の分析と、耐震設計手法の課題に関する検討を行った。その結果、重力式岸壁の液状化に関連する被害メカニズムや、岸壁に作用する土圧や慣性力の位相特性を把握することにより、重力式岸壁のより合理的で経済的な耐震設計法を構築する可能性を有していること、またそのためには、実大規模の試験岸壁の地震時挙動を詳細に観測する必要があることがわかった。そこで、これらの課題を解明するために平成10年度より釧路港において実大試験岸壁による地震時挙動観測プロジェクトを開始した。なお、本観測システムの構築、観測データの評価、設計法構築に向けた検討にあたっては、京都大学防災研究所地盤災害研究部門の井合教授を委員長とする「港湾構造物の耐震性調査検討委員会」を組織し、専門有識者の技術的指導と助言を得つつ進めている。本報告では、この観測プロジェクトが開始された経緯や基本的な考え方、これまでに観測プロジェクトで得られた観測データの内容とその解析結果、及び新たな重力式岸壁の耐震設計法について、平成16年度は、観測プロジェクトの経緯、観測システムの概要、2003年十勝沖地震動の観測データと解析結果を中心に、平成17年度については、現在、検討を進めている「重力式岸壁についての新たな耐震設計法」の内容について報告する予定である。 |