港湾や漁港に於いて係留船舶の動揺が問題となっている場合、動揺原因を解明する前に動揺の実態を把握するため、船体動揺観測が行われる。その観測方法としては、北海道内においてはビデオ観測が主流となっている。ビデオ観測は、船体側方及び後方より撮影した映像から動揺変位を読み取るシンプルな方法であり、得られた動揺データの信頼度は高い。しかし、厳密に言えば、2台のビデオカメラ映像から船体の3次元的な挙動を正確に求めることは不可能であり、これまでのビデオ観測データは少なからず遠近誤差を含んだものであったと言わざるを得ない。微小な動揺が問題となる場合や政策的に動揺の上限目標値を定めるような場合を想定すると、より正確に実態を把握できる必要性が高い。したがって、より高精度な観測手法を確立する必要がある。その方法の一つとして、GPSの利用が考えられる。実際に高精度・リアルタイムに動的挙動を測位可能なRTK-GPS( Real Time Kinematics-GPS) を利用した船体動揺観測が全国で何件か実施されている。しかし、有望な観測手法でありながら、なかなか普及は進んでいない。それは、船体動揺観測にGPSを適用することによる利点や観測精度など、GPS観測の実用性についてあまり示されていない為であると思われる。そこで、従来のビデオ観測とGPS観測を同時に実施し、両者の観測結果を比較検証することにより、GPS観測の実用性を評価してみることとした。また、詳細は後述するが、本報告で示すGPS観測結果は、漁船等の比較的小刻みな挙動観測に適するRTD-GPS(Real Time Dynamics-GPS)を、全国で初めて係留船舶の動揺観測に適用した事例である。 |