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 土壌改良工法の検討について(第3報)

作成年度 1973年度
論文名 土壌改良工法の検討について(第3報)
論文名(和訳)
論文副題 昭和47年度(E-1)
発表会 昭和47年度技術研究発表会
誌名(No./号数) 昭和47年度技術研究発表会
発表年月日 1973/10/01
所属研究室/機関名 著者名(英名)
矢野義治
抄録
土壌酸性に関する研究は古く約60年前に大工原銀太郎博士により原因および性質、分布などの研究調査がおこなわれた。これにもとづき酸性土壌の改良対策がうちたてられるなど輝かしい業績を次ぎ次ぎに発表し世界に日本土壌学の名声を高めた。これらの成果を基礎にして戦後の昭和22年に始められた低位生産地改良の諸事業および開拓地土壌調査事業における「酸性土壌の改良」が補助事業として農業政策に取り込まれてきた。当時の農林省の企画者らは酸性土壌改良対策は大工原博士らによる研究成果で十分に事業として農業行政に取りいれられても矛盾は生じないだけの基礎的研究はなされていると判定していたようである。ところが各地の酸性土壌地帯で大工原酸度の測定およびそれに対する石灰施用を行ったが、実際には酸度矯正目標に改良されておらず栽培試験の収量も少ないという結果が報告され再び土壌酸性の研究が脚光をあびた。そして多くの研究者による理論面、実際面での研究成果の発表をみたが、土壌酸性の本質に関しては大工原博士の理論をこえるものはみいだされず、いまだに未解決のまま放置されている。実際面では石灰所要量の算定方法を従来の大工原酸度法でなく土壌の緩衝能を測定しそれから求める中和曲線法を採用するなどの大きい進展がみられた。土壌の緩衝能測定により求めた石灰所要量を施用した場合の作物栽培試験も良い結果を得たので昭和28年以来この方法を採用してきた。ところが、ふとしたきっかけ(会計検査員の指摘)で昭和45年頃から再び酸性矯正が問題にされてきた。問題となった点は改良目標にみあう石灰を施用しているはずなのに実際に施工後土壌のpHを測定しても目標どおりにpHが矯正されていないということであり、その原因の究明および、対策が事業実施機関で早急に解決されなければならない事項として上がってきた。それで古くから度々論じられた土壌酸性問題であるが、今一度問題点の整理、その解明のための指針をうち出す助けとなればと考え、「土壌改良工法の検討」が取り上げられた。ところでわが国の土壌に含まれている石灰は諸外国に比べ著しく少ない。例えばアメリカ1.306%、イギリス3.833%、フランス4.065%に対し、わが国は僅かに0.629%である。そのうえ温暖湿潤気候帯にあるから、絶えず土壌の酸性化が進展する状態にある。従ってたとえ適量の石灰を加え一時酸性を矯正してもその後の肥培管理が適当でないときは数年にして酸性化が著しく促進される。ところが日本農業においては酸性土壌にあまり深い関心をはらっていないように見える。これは日本農業が稲作主体のものであったからである。すなわち稲は酸性に強い作物で可成りの酸性においても良好に生育するからである。しかし北海道では畑作が中心であり、土壌の酸性問題には関心が深く、すでに明治末期から大正にわたり多くの調査研究がなされている。例えば「石灰容量検定法の比較調査」「酸性土壌矯正試験」などが大正4年頃におこなわれている。一方農業行政の面では昭和9年に道庁経済部長名で「石灰施用指導奨励方針に関する件」として通達が出され、事業面でも酸性土壌の改良問題が取りあげられている。このように北海道では研究調査の面でも農業行政の面でも土壌酸性に関しては古い伝統をもっている。これら過去の研究成果をもとに北海道開発局の農業部門が三たび土壌の酸性問題に取り組んだのである。
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