蒸発散量の把握は、流域の水循環を解明し、効果的な利水・治水対策・水環境の評価などを行うために不可欠である。特に森林域の蒸発散量の推定は水資源量の把握にとって重要である。しかしながら広域面からの実蒸発散量を定期的かつ定量的に算定することは実測データが少ないこともあって難しい。[*]従来、広域面からの蒸発散量を推定する方法にはリモートセンシングデータを用いる方法が提案されてきた。この中には、NOAAから得られる植生指標NDVIから可能蒸発散量を求める方法1)やLandsat/TM画像のNDVI値を浸透面積率に割り当て、補完法を適用して蒸発散量を求める方法2)などがある。しかしながら、推定された蒸発散量が水収支的に妥当かどうかについて評価した事例は少ない。[*]本研究は、積雪寒冷地域にあるダム流域を対象として蒸発散量を推定した。対象とした流域は、山間地で標高変化が大きく、地被は概ね森林となっている。このような流域での降雨量は地形依存性が高いので、推定の際に地形因子である標高・斜面向きなどの影響を考慮する必要がある。同様に、降雪量も地形依存性が高い。また、降雪に対する風の影響も考えられるので、積雪水量の推定についても、標高・斜面向きなどの地形因子を考慮する必要がある。[*]以上により、流域降水量の推定精度の向上を図り、水収支法を適用して実蒸発散量を推定した。最終的にこれを植生指標NDVIと関連づけ、広域面の蒸発散量の推定を行った。 |