水資源を治水、利水の両観点から効率的に管埋するために、流域水収支の検討は非常に重要である。特に蒸発散量は直接測定が困難でメカニズムの解明が十分に行われていないため、正確な推定が困難であり、蒸発散量の把握は水収支の精度向上に不可欠となっている。しかし、対象が広域であることから緻密なデータの収集は難しく、観測できる項目も限定されたものになるため熱収支を考慮した蒸発散量の推定は非常に困難になっている。[*]そこで本研究では石狩川流域を対象として植生分布を利用した蒸発散量の推定を行った。植生分布は国土数値情報のメッシュの大きさに対応しており、ここでは針葉樹林、広葉樹林、草地、水田、水域など10種類の地被に分類して用いた。気温、湿度など容易に得られる気象データで求められる可能蒸発散量は通常、実蒸発散量より大きく算出される。各地被の実蒸発散量と可能蒸発散最(Penman法)の蒸発散比を求め、地被ごとに異なる蒸発散比を用いることで、推定に用いるデータを限定し、推定処理を簡略化する。本研究では実蒸発散量を美々湿原試験地と駒里牧草地に観測機器を設置して算出し、草地と耕地の蒸発散量を求めた。森林域は山岳地域など実蒸発散量の観測が困難な場合が多い。石狩川流域では約95%が森林、耕地、草地の地被で覆われており、本研究では、水収支法で求めた蒸発散量から土地利用別の実蒸発散量を推定するための蒸発散比を導いた。 |