河川における護岸工事の工法のひとつとして籠マットが用いられてきた。この工法の特徴は自然石で多孔質な構造であることである。このため、水中では水生昆虫の生息場となり、陸上では水辺植物の生育場となり、生態系を保全するうえで有効な工法となっている。この工法のメリットをさらに高めるため、これらを改良した新しい工法が近年採用されてきている。しかし、この工法は金網と砕石を一体成形するために接着剤を用いており、接着剤の種類によっては成分中に環境ホルモンを含むものもあり、流水への影響が問題視された。[*]北海道開発局がエポキシ樹脂系の接着剤を護岸に採用したのは1995年からで、当初はビスフェノールAを原料としたものを採用していた。1997年に環境庁から出された中間報告で、「内分泌攫乱作用を有すると疑われる化学物質」(環境ホルモン)として指摘された67物質にビスフェノールAが含まれていることから、1998年からこの中間報告では内分泌撹乱化学物質として示されなかったビスフェノールFを原料とした接着剤に切り替えた。[*]最近、スペイン・グレナダ大学による研究で、ビスフェノールAより弱いが、このビスフェノールFも女性ホルモンに悪影響を与える作用があるとの情報があるとの指摘がなされた。現時点で厚生省の調査などでビスフェノールFが人体に影響を及ぼしたという科学的な知見は得られていない。しかし、社会的な影響を踏まえて、現在までに使用されている接着剤の河川での水質現況を調査するとともに、河川の流水への影響を考慮して長期的な溶出濃度の推定を検討した結果について報告する。 |