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発表 放射性同位体トレーサを用いた農地小河川の河床材料の生産源推定

作成年度 2014年度
論文名 放射性同位体トレーサを用いた農地小河川の河床材料の生産源推定
論文名(和訳)
論文副題
発表会 応用生態工学会 第18回大会
誌名(No./号数)
発表年月日 2014/09/18 ~ 2014/09/21
所属研究室/機関名 著者名(英名)
水環境保全チーム水垣 滋(MIZUGAKI Shigeru)
北海道大学渡辺 のぞみ(WATANABE Nozomi)
北海道大学根岸 淳二郎(NEGISHI Junjiro)
抄録
1. はじめに 河床堆積物を構成する土砂・有機物について、斜面から流路への移動経路を評価することは、河川の底生動物の種多様性を評価する上で重要な情報の一つとなる。斜面から流路への土砂移動経路を把握するには、放射性同位体トレーサを用いた土砂生産源推定手法が有効であり、欧米の農地河川流域を対象に開発されてきた(例えば Wallbrink, 2004)。農業生産がさかんな十勝川流域では、山地や農地を源頭とする小河川が河川生態系の重要な構成要素であり、この手法により河床堆積物の生産源を評価できる可能性がある。本研究の目的は、農地小河川流域の河床堆積物の特性を把握し、放射性同位体トレーサを用いて土砂生産源を明らかにすることである。 2. 方法 研究対象流域は十勝川水系音更川流域とした。中・下流域の農地を貫流する小河川のうち、山地および農地を源頭にもつ小河川それぞれ7河川において、各河川2地点、合計28地点から河床堆積物を採取した。また、生産源土壌として森林、農地および渓岸裸地斜面から表土を採取した。採取した土砂試料について、粒径特性、有機物含量、および放射性同位体濃度を測定した。粒径特性は、土砂試料の粒径0.425 mm以下の成分を過酸化水素水で有機物を分解した後、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により粒度分布を調べ、等価球体を仮定した粒子の比表面積を求めた。有機物含量は、強熱減量(750℃)で評価した。放射性同位体濃度は、γ線スペクトロメトリーにより137Csおよび212Pb濃度を測定した(Mizugaki et al., 2012)。 3. 結果と考察 河床堆積物と生産源土壌の物理特性(有機物含量、比表面積)と放射性同位体特性(Cs-137濃度、鉛-212濃度)を比較した(図-1)。生産源土壌は農地(Agr)、森林(Forest)および渓岸裸地(Subsoil)で異なる特性を示すことがわかった。河床堆積物は、いずれの特性値もおおよそ生産源土壌の分布範囲にばらつくことがわかった。3種の土砂生産源について4つの特性値を用いて主成分分析を行ったところ、第2成分までで全体の87%を説明でき、第1成分と第2成分でプロットしたところ、生産源タイプごとに分布範囲が明瞭に分かれることがわかった(図-2)。また、河床堆積物の第1成分および第2成分のスコアはおおよそ3つの生産源の分布範囲内にプロットされることがわかった(図-3)。 これらのことから、3つの生産源の第1成分および第2成分のスコアをエンドメンバーとして河床堆積物の生産源推定が可能であることがわかった。ただし、各生産源の分布範囲から外れている河床堆積物もあるため、ミキシングモデルでは生産源寄与を評価できない(図-3)。そこで、河床堆積物ごとに各生産源とのマハラノビス距離に基づいて生産源寄与率を評価したところ(Mizugaki et al., 2012)、農地の寄与は0.22-0.85、渓岸裸地の寄与は0.09-0.68、森林の寄与は0.06-0.21と推定された(図-4)。農地小河川と山地小河川で生産源寄与を比較すると(t検定)、農地の寄与は農地小河川で有意に高く、渓岸裸地の寄与は山地小河川で有意に高かったが、森林の寄与では差が認められなかった(図-5)。 源頭部の土地利用が異なる農地小河川の河床堆積物について、物理特性と放射性同位体特性を併せてトレーサに用いることで、河床堆積物に対する生産源の寄与を評価できる可能性が示された。今後、推定された生産源の寄与が水文・水理特性や底生動物の種組成や個体数とどのような関係があるのかを検討する必要がある。 【参考文献】 Mizugaki S, Abe T, Murakami Y, Maruyama M, Kubo M. 2012. Fingerprinting Suspended Sediment Sources in the Nukabira River, Northern Japan. International Journal of Erosion Control Engineering, 5: 60-69. Wallbrink PJ. 2004. Quantifying the erosion processes and land-uses which dominate fine sediment supply to Moreton Bay, Southeast Queensland, Australia. Journal of Environmental Radioactivity, 76: 67-80.
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