これまで山地流域における水・土砂動態の観測・モデル化が進められ、多くの新たな知見が得られてきているが、これらの観測結果・事実を有効に実態把握・予測に活用するためには(a)観測事実と予測モデルの乖離と、(b)水・土砂流出における空間スケールの影響の理解が重要である。私たちは(b)の理解が(a)の課題解決につながると考え、レビュープロジェクトを進めているのでここで紹介する。国内外の空間スケールと水土砂流出に関する研究事例・データについて収集し、以下の3つの視点で整理した。(1)流域面積と水土砂流出現象を表現する指標値の関係。(2)流域面積の違いによる水土砂流出現象、支配プロセスの違い。(3)空間スケールが水土砂流出現象に及ぼす影響の数値計算モデル上の取り扱い。これまでの事例収集の結果、水・土砂流出における空間スケールの影響を考える際には、(A)対象とする空間スケールの違いにより水土砂流出現象がどのように変化するか?特に支配プロセスの変化はどうか?と(B)対象とする空間スケールが同じであっても、水土砂流出現象はばらつくのか?どのように空間的にばらつくのか? の2つの問題を分けて整理することが重要であることがわかってきた。 |