流域スケールの土砂生産・流出特性を明らかにするために、北海道の総主別川流域を対象に濁度計による浮遊土砂(SS)濃度観測(2011~2014)を行い、融雪・降雨出水66イベントについてSS濃度の履歴(ヒステリシス)を類型化し、水文流出特性との関係を解析した。ヒステリシスのループ形状は時計回り(28)、直線(24)、反時計回り(10)、8の字(4)の順に多く、時計回り、8の字、直線、反時計回りの順にイベント中の最大流量が大きいことがわかった。反時計回りのヒステリシスは増水時より減水時にSS濃度が高い場合に生じ、大規模な出水時に流域の広範囲の斜面・河道から土砂が供給・輸送されたと推察される。一方、時計回りのヒステリシスは増水時より減水時にSS濃度が低い場合に生じ、小規模出水時は河床堆積物や流路近傍斜面からの土砂供給に限定されたと考えられる。融雪と降雨では最大流量や流出率に有意差が認められたが、ループ形状の出現傾向への影響は認められなかった。また大規模な崩壊や地すべりの発生は認められなかったことから、今回得られた結果は、水文特性の季節性に関係なく、流域の定常的なSS流出特性を示していると考えられる。 |