北海道では,河川堤防法面植生種として寒冷気候においても活着しやすく生長も早い外来の草種が導入されてきたが,近年,自然公園内の道路法面等の緑化の場面において,在来植生種の導入や生物多様性に配慮した緑化が実践されており、河川堤防においても,環境に配慮した在来植生種の導入による緑化が求める声が出てきている。そのため,本研究所では河川の実堤防を試験地として,在来種子による法面緑化の試験施工を平成23年度から実施し、追跡調査を行っている。
試験地は北海道恵庭市東部の千歳川堤防で在来種としてヨシ,オギ,ビロードスゲ等を選定し,これらの種子を腐植酸吹付けと植生シート工により植栽している。また,現地試験結果との比較を行うため,室内において在来種子の発芽試験を行い,発芽率を計測した。その結果,現地試験では,1ヶ月後の調査において室内試験と同程度の発芽が確認されたが,2ヶ月後,3ヶ月後の調査では確認個体数が減少し,発芽していた種子も枯死していることが確認された。試験地近傍のアメダスの気温・降水量の観測結果や現地調査結果から,発芽後の定着率の向上を図るためには,発芽後の十分な土壌水分の保持と他の草種との競合を緩和させる必要があることが示唆された。 |