北海道東部の女満別川流域を研究対象として、永年の農地利用推移に伴う流況変化をARモデルにより解析し、農地への転用が表面・中間流の応答関数を尖鋭とすること、有効降雨のうち表面・中間流への寄与分(分離則)が農地面積増分に応じて大きくなることを明らかにした。これらの現象を考慮し、分割流域の農地面積割合に応じて成分系への降雨入力比率を変える分布型の2成分ナッシュモデルを作成した。このモデルは簡易なものであり、土地利用の経年的変化がある場合でもパラメータを変更する必要はなく、単に各成分の有効降雨への分離割合を農地利用に応じて変化させるだけで、日流量が精度良く計算できる。このモデルは仮想的な土地利用条件に応じた流況予測に利用可能であり、流域内の土地利用計画への応用性が高い。
火山灰土壌で覆われ、農耕地としての土地利用の割合が高い3つの小流域での浮流土砂の特徴を明らかにした。流域の表層地質の透水性が高いことから、流出率は小さいが、火山灰土壌は軽くまた固結が弱いことや凍結土壌により融雪時期に地表流が発生し、浮流土砂量が多く観測される。浮流土砂量は、既報されている流量(Q)と浮遊土砂量(Qs)の経験式、Qs=(4×10-8~6×10-6)Q2より3~4桁ほどオーダーが高い。また、融雪期では、降雨期より流水中の懸濁物質の濃度が高いことが特徴的である。浮流土砂の粒度分布をみると、農地の土壌と類似し、農地を土砂の生成起源を考えられる。浮流土砂は粒径0.1mm以下の細かいシルトを多く含み、wash loadとして流下するものが多く、河川での沈砂はわずかと考えられる。すなわち、農地から河川へ流入する前に土砂流出抑止対策を行うことが効果的である。 |