北海道には海成の堆積岩や火山・温泉の作用を受け変質した火山岩が広く分布し、土木建設においてこれらの岩盤を扱う場合、掘削により風化が急激に進行し、化学的風化作用の影響で掘削土砂から有害物質を含んだ酸性水が溶出する可能性があり、植生の生育障害やコンクリート構造物の劣化、水質汚染などの環境問題に発展する場合がある。本文は、黄鉄鉱を含有し熱水変質の影響を被った新第3紀鮮新世の火山岩類から成るボーリングコアを試料に実施した風化促進試験結果などを基に、岩石の化学的風化の進行に伴う酸性水および重金属類溶出の可能性について述べたものである。通常の自然状態の試料(未処理試料と呼ぶ)において中性である岩石においても、過酸化水素水による強制風化後に強酸性を示すものがあり、それらは硫黄を多く示すものが多かった。また、硫黄を含む岩石であっても、方解石を同時に含んでいるものは、強制風化後も中性を保つものが多かった。X線回折試験結果を考察したところ、風化後の酸性化は、含有する黄鉄鉱と方解石の量比に関係していることが明らかとなり、化学的風化に伴うpHの低下は、硫酸の生成に起因する黄鉄鉱等の含有量だけでなく、硫酸を中和する方解石等の含有量にも大きく関与する複雑な現象であることが分かった。 |