2000年3月、23年ぶりに噴火した有珠山の影響は有珠山周辺にとどまらず、北海道の中央部と本州とを結ぶ交通の大動脈の分断などにより、北海道の経済社会全体に大きな影響を及ぼした。特に道路ネットワークに着目すると、有珠山周辺では道央自動車道、一般国道230号が寸断され、そのほか複数の路線で通行規制措置が執られた。その結果、道路利用者は大幅な迂回を余儀なくされて旅行時間の増大による損失が生じ、また、旅行時間の増大の程度によっては交通行動そのものを取り止めた道路利用者がいたものと考えられる。そこで本研究では、災害時における道路ネットワークを対象としたユーザーコストの定量化を念頭に置き、災害時の交通行動モデルの構築を試みた。このモデルは、旅行時間の増大によって交通行動を取り止める場合も考慮することで、道路区間が通行不能となることによる旅行時間費用の増大による損失と、交通行動を中止することによる機会損失が同時に推計されることが特徴である。次に、当該モデルを用い、有珠山噴火に伴う実際の通行規制状況を再現し、当該モデルにより推計される配分交通量と交通量調査結果とを比較し、さらに、旅行時間費用損失及び交通行動を中止することによる機会損失額の算定を行った。 |