北海道日本海のほぼ中央に位置した石狩湾沖合は、周年的に栄養塩の乏しい対馬暖流の流入がみられることから、太平洋やオホーツク海と比較して漁業の生産性が乏しい海域となっている。しかし、石狩湾沖合付近の海域ではタラ、ホッケ、カレイ等の好漁場が存在し、有力な漁場になる可能性を有する海域として注目されている。石狩湾の地形は水深120mまでは緩勾配の広大な砂浜海域が広がり、その沖は1/30の急勾配で深くなっている。一方、北海道日本海は潮位変動が他の海域よりも小さい反面上層部とそれ以深の栄養塩の豊富な層との密度境界面に内部波が発達している。この内部波エネルギーを利用して、構造物等により深層水を効率的に湾内の有光層に流入させることができれば、基礎生産が強化され、新たな漁場が形成される可能性がある。内部波エネルギーを利用した人工湧昇流漁場のの整備を行うためには、内湾の流動および水質の変化を詳細に把握するとともに、内部波の挙動や水質生態系の変化等を予測する技術の開発が必要である。本研究では、湧昇流の発生を確認するため水深90mと800m地点における現地観測を行った。その結果を基にして、内部波が石狩湾口までの伝達・湧昇状況が再現できるモデルを構築し、人工湧昇流による深層水を利用した漁場整備の基礎資料とした。 |