トンネルの変状には,覆工材料の劣化以外に地山のもつ地形地質特性や水理状況及び気象条件等,構造物周辺の環境的要因が複雑に関与する。また,変状原因は,これら要因の組み合わせによる場合が多い。トンネルの変状対策は,変状の進行が明瞭かつ公共性への影響が大きいトンネルから順次進められているが,その方法は対症療法的な側面が強い。変状に対する地質その他の要因を整理して,メンテナンスを行うことができれば,トンネルの安全性の向上及びコスト縮減に寄与するものと考えられる。本報告は、北海道内36箇所の国道トンネルで実施した2度の調査結果をもとに,変状の経年的な変化とその要因について報告するものであり、まとめると以下のとおりである。1) トンネルの変状には周辺地山の地質条件が関与するトンネルが認められる。2) 岩種別には,新第三紀層の火山岩と火砕岩中に変状の進行が認められるトンネルが多い。3) 変状の進行が緩慢なトンネルは,新第三紀堆積岩中に多く認められた。4) 変状が進行していると考えられるトンネルでは、10年程度以上経過してはじめて把握できるような進行速度の緩慢な変状が確認された。5) トンネル変状には凍害が原因となっているものも多く,それらは堆積岩中のトンネルに多い傾向が認められた。トンネルの変状には,覆工材料の劣化と周辺地山からの外力による変状があり,それらは前述のとおり,地山の地質条件とも深く関与している。なかでも周辺地山の劣化に伴い経年的な影響を与える緩み土圧や塑性圧及び偏土圧等の作用は,トンネルの施工段階やメンテナンスの上で最も障害の多い現象であり,施工直後に変状が発生する場合や供用開始後,しばらく経過してから現れる場合もある。トンネルの変状に対しては,その現象を捉えた上で効率的に対処することが重要である。 |