北海道開発土木研究所を主体とする「積雪寒冷地における環境・資源循環プロジェクト」(平成12~16年度)では、家畜ふん尿処理の手法として嫌気性発酵を利用したバイオガスシステムを取り上げ、湧別町及び別海町の2箇所に試験施設を設置して実証的に研究を進めている。本報告では施設稼動初年目を経過した湧別資源循環試験施設に注目して、バイオガスプラントの初期稼働時の運営状況やこの1年間に利用農家の経営に与えた影響を分析し、バイオガスシステムへの経営的効果について検討した。①プラント施設の稼動初年目費用では、施設改善、補修及び必要とするエネルギーに係る支出の割合が大きい。 ②プラント施設の管理人の作業時間では、ふんの固液分離及び分離固分の堆肥化に係る割合が大きい。 ③利用農家のふん尿処理作業では、プラント施設への運搬におけるコントラクター利用機会が増加して、ふんの畜舎外移動、堆肥切り返し及び圃場散布の作業時間が軽減された。 ④利用農家における堆肥・消化液の総散布面積が増加した。内訳では、牧草地は2.7倍に増加したのに対し、畑作物では1/3に減少した。⑤ふん尿の散布範囲が拡大した要因として、ふん尿に対する利用農家の意識が、従来までの廃棄物処理から有機質肥料の積極的利用に転換したことが考えられる。 |