【目的】これまで、筆者らは試験研究施設としての個別型バイオガスプラント(BGP)や共同型BGPにおけるエネルギー(EN)的な有効性や経済的成立条件についての検討を行ってきた。本研究では、実用規模の共同利用型BGPについての建設から運転にかかわるEN収支を総合的に比較検討した。【方法】モデルとする共同型BGPは、別海資源循環試験施設の調査結果をベースにして、想定した基本要素のみの施設とした。原料は副資材を用いないふん尿スラリーのみとし、規模は乳牛1000頭とした。EN評価については、総投入化石ENと総産出ENとを比較し、両者が釣り合うまでの運転年数(償還年数)を求めた。【結論】総投入ENのうち、初期投入ENは39、300GJ、運転ENは2、400GJ/年、メンテナンスENは470GJ/年となった。総産出ENは、産出電力が2、960GJ/年、利用可能熱量は5、900GJ/年、消化液の等価ENは2、005GJ/年となり、利用可能ENのみで総投入ENを回収するには、約7年の運転年数がかかることがわかった。しかし、BGPから排出される消化液を有効利用することで約5年の運転年数で総投入ENが回収できるという推定結果が得られた。 |