近年、酪農経営の規模拡大により家畜ふん尿の発生量が増大するとともに酪農家の高齢化に伴う労働力不足などで、酪農家個々による家畜ふん尿の適切な処理と有効利用が難しい状況になりつつある。ヨーロッパ諸国(デンマ-クやドイツなど)では、家畜ふん尿をメタン発酵(嫌気発酵)し、生成した消化液やメタンガスを肥料およびエネルギーとして利用している。これらの国では複数の農家で利用する共同利用型プラントあるいは農家個々で設置した個別型プラントが普及している。そこで、北海道開発土木研究所では気象条件の厳しい北海道におけるバイオガスプラントの適応性を検討するため、共同利用型のバイオガスプラントを別海町と湧別町に建設し、関係機関の協力を得ながら、家畜ふん尿の適切な処理と利用に関する試験研究を行う「積雪寒冷地における環境・資源循環プロジェクト」を実施している。このプロジェクトにおいてバイオガスプラントのエネルギー収支を調査する目的は、効率的な運転方法を提示することと、新たなプラントの計画・設計時に有用なデータを提供することである。本報告では、湧別資源循環試験施設において2003年夏に得られたエネルギー収支について報告する。 |