| 冬季に港内水面が凍結する港内結氷は、北海道各地の港湾・漁港において、出漁不能、船舶の待機・損傷など、大きな経済的被害を与えており、従来から、環境条件や状況に応じた種々の結氷対策が提案されてきた。 著者らは、特に、ほぼ毎年結氷し、深刻な被害をもたらしている大津漁港を対象として、その結氷メカニズムの理解、対策工の検討、また提案される対策工の相対的評価を支援するためのツールとして汎用的な結氷シミュレーションモデルの開発などに取り組んでいる。本研究では、2002年度に引き続き、2003年度冬季も気象観測を実施し、1昨年度に得られた気象データも踏まえた熱収支特性について再検討した。また前述の結氷シミュレーションモデルの一つを構成する「氷の相変化モデル」には、単純化のため、氷内の温度分布を定常熱伝導問題として算出していた。しかしながら、このモデルでは融解過程を適切に表現することができない。気温が低い場合でも、日中の輻射熱による融解が考えられ、特に対策工の効果の検討には、出漁日数という観点から、春先の融解過程も重要な検討項目であることから、本研究では、Maykut and Untersteiner (1971)に準じるモデルを適用し、その合理的な数値計算手法を検討するとともに、これによる推定値と実測値とを比較した。 |