近年の河道計画の策定においては,樹木群を死水域とした流下能力を算定しているが,中小河川においては河道断面に占める樹木域の割合が高く,死水域扱いによる水位の再現精度低下の場合もある.しかしながら,洪水時の樹木群内における流況の実測は事例が非常に少なく,まだ不明確な点が多い.本研究は,2005年8月21~22日の降雨に伴う出水時に,美唄川においてラジコンボートに搭載したADCPを用いて河道の樹木群内における流速分布観測等を実施したもので,以下の事が明らかになった.・樹木群内における鉛直流速分布は,おおむね理論式と適合しているが,両岸に樹木群が存在する河道では,河道中心部においても樹木群の影響を受ける分布を示すことがある.・鉛直流速分布を平均した流速の横断方向分布においては,樹木群内は観測値が理論値よりやや高めを示し,河道中央部では逆に理論値よりかなり低めの流速を示した.・当該観測断面においては,全流量の1/4強が樹木群内を流下していたことから,中小河川の流下能力算定において樹木群を一律に死水域とすると実情に合わないことがある.今後、両岸に河畔林のある河道の河道規模,樹木群規模等から河道中心部など樹木群外における樹木群影響範囲の検討を進めていきたいと考えている |