港湾・漁港施設等の整備を行う上で、防波堤などの構造物は、その本来機能である防波、防砂機能だけではなく、周辺の自然環境と調和されることが求められている。防波堤建設当初の防波堤背後には大型褐藻類等の藻場が形成されたが、数年経過後は藻場が形成されない状態となっている。このようなコンブ藻場が形成されない磯焼け現象の原因の解明と藻場回復のための対策が急務となっている。本報は、防波堤背後小段上及び周辺岩礁域の生物棲息状況と流動等を観測し、ウニ等の植食動物や水質環境と海藻形成要因との関連について検討した。 江良海域では、年変動を伴いながら深い水深帯でも大型海藻の繁茂できる海域であり、防波堤背後でもホソメコンブが繁茂可能な場となっていたが、小段上の流動環境は、流速振幅が40cm/秒以下の確立が80%以上となり、穏やかな場が形成されやすく、ウニ等の侵入による摂食圧を受けやすい場であった。ウニの除去実験結果から、ウニの生息はホソメコンブ繁茂に重大な役割を持っていることが示唆されており、水中ビデオカメラを用いたウニの行動を観察した結果においても、流速が40cm/秒より遅くなると、ウニの個体数は増加傾向を示すことが実海域においても観測された。ウニによる海藻群落形成阻害は植食動物の食圧や水質環境が複雑に関連しているものと推察した。 |