磯焼けが進行している北海道日本海側沿岸では、魚介類加工残渣を発酵させ肥料化した「発酵魚かす」を海域に投入し、貧栄養を解消して藻場を再生する方策が試みられているが、施肥の有効性が定量的に明らかにはなっていない。そこで室内実験によって発酵魚かすからの栄養塩溶出過程、また浅海域に発酵魚かすを付設したコンクリートブロックを設置し、発酵魚かすからの栄養塩の拡散状況および海藻繁茂状況について検討した。 室内実験の結果、NH4-Nは滅菌海水を除き実験開始から速やかに増加し、42日後の濃度比は60%以上となり、溶存態窒素の大部分が無機化されたが、NO3-Nの濃度比の増加はNH4-Nに比べ極めて低かった。リン化合物は、実験開始から28日後に概ね20%以上がPO4-Pとなったが、それ以降の増加は見られなかった。 現地調査の結果、カマスで投入した魚かすは約2ヶ月で重量の20%が減少するが、窒素分のほとんどが有機態のまま流出していることが確認された。好気条件下での室内実験においても窒素分の半分以上が無機化するのに20日程度を要することが明らかになったことから、沿岸海域に単に投入しただけでは有機態のまま広域に拡散し、沿岸域に対する施肥効果は期待できないものと推察される。 |