| 近年、北海道道南海域は磯焼け現象が顕在化し深刻な状況になっている。藻場は、海生生物の蝟集場、産卵場等重要な役割を担っていることから、防波堤等沿岸構造物整備に当たっては、副次効果として藻場機能を付加し、多様な生物の生息場を供給することをねらった構造となるよう工夫されている。江良漁港西外防波堤においても、港内側に浅場領域を創出し環境に配慮した構造となっているが、建設当初は良好な藻場を創出したが、整備後約7年を経過した現在では、藻場が形成されない状況となっている。藻場が形成されない原因は不適な海況変動に起因する水温の上昇や、栄養塩不足、藻食動物の摂餌による影響が大きいといわれているが、本海域による磯焼けの持続する要因は、ウニによる摂餌が大きいといわれている。そこで、水中ビデオカメラによりウニの行動を監視することとした。ウニは流速が大きくなると摂餌行動が取れなくなるといわれており、流動環境も同時に観測することとした。この結果、ウニは0.4m/秒を境界として画像から消え去り、蝟集しないことが観測された。このことは、摂餌もできないと判断されることから、ウニによる食害を防止するためには、0.4m/秒以上の流動環境を創出することが必要と考えられた。さらに、このような場において藻場を回復させるために有効な基質として、動揺式人工基質を設置して実験をしたところ、良好な藻場が形成された。被覆ブロックには藻場が形成されないことから、動揺式人工基質は、低流動環境にあっても、ウニの摂餌圧を低減させる効果を発揮し、藻場形成に有効な基質と判断した。 |