結氷河川における感潮域の水理特性は,気象や観測機器の問題等から詳細な観測が困難であり未解明の部分が多い.また,冬期における河道維持管理のための流量観測は便宜上,夏期と同様の手法で行われている.[*] 河川工学の立場より感潮域で考慮すべき問題の1つとして,洪水の疎通・取水・塩害・水産資源の観点から塩水遡上距離が上げられる.塩水遡上距離は流量と潮位により変化するため,河川流量と河道内に遡上する海水の流量の挙動を把握する事は重要である.[*] このような事から,本研究では現地観測データより感潮域における結氷時と開水時の水理特性の把握を行う.結氷時と開水時の主な比較・検討は,潮位と水位の関係,流心位置,鉛直流速分布について行う.現地の観測は,感潮域の1 横断面における流速および塩分濃度の分布,上下流水位の連続観測である.[*][*]結氷時と開水時とで感潮域の連続観測を行う事により,潮位変動に伴う観測地点の水位変動,潮汐による流心位置の変化,塩淡境界層付近で逆流の最大流速が生じる現象は,大潮時には氷板の有無で顕著な差は認められない事を示した.さらに,流速の横断方向分布に関し強制渦型から自由渦型への変化が原因と推測される流心位置の変化や,水位上昇期の塩淡境界層付近で逆流の最大流速が生じる鉛直流速分布等の現象が存在する事に関しては,複雑な感潮域の水理特性の解明が必要不可欠であり今後の課題である. |