河川管理において流量は、最も重要な水理量の一つである。実際河川流量は、流域特性に合わせて観測所を設置し、その実態を把握することが必要であるが、その中で、流域全体を網羅し得る最下流部で把握することも重要である。しかし、河口域では特に渇水期になると、潮汐の影響や塩水の遡上などにより、通常の流量観測法1)ではその精度に問題が生じる。本研究は、緩混合型で塩水が遡上する河川感潮域において、流量観測を連続3昼夜全18回行い、水位変動による流況変化を把握した。また、当該箇所における観測法の違いによる特性を明らかにするために、可搬型流速計による2点法、精密法のほか、ドップラー流速計(ADCP)を用いた観測も同時に行った2)。それらの結果を基に、流量変動と、それぞれの観測法について比較、検証を行い、河川感潮域において最適な流量観測方法の提案を試みた。[*][*]本研究で得た結論を以下に示す。[*](1)今回の満干潮の水位差は約1.3mであり、塩水は緩混合型で遡上していた。流れは上げ潮から満潮付近で流れにくくなり、下層には塩水の逆流も観測された。[*](2)直接的な塩水の逆流がなくても、感潮域では潮汐によって流速、流量は時系列に大きく変動する。従って、1回の観測をもって代表流量とはならない。[*](3)感潮域での流速は、逆流現象など潮汐変動によって周期的な増減を繰り返しているため、観測時に塩水位置や水位変動、流向などの水理条件も把握する必要がある。そのため、可搬型流速計よりも流向流速が計測できるADCPの方が望ましい。[*](4)ADCPによる観測において、測定時間20秒と180秒の流速差は小さく、20秒の観測でもある程度の精度は確保されることが分かった。従って感潮域での流量観測は流況の変化が速いため、測定にかかる時間を許容範囲内で、できるだけ短くし、短時間で1観測が完了する方法が望ましい。 |