近年,港内泊地等で水産物の蓄養・養殖が実施され,養殖物の糞や残餌などの有機物が海底に堆積し底質が悪化している.一方北海道では,漁業活動に伴い各種水産廃棄物が排出され,中でもホタテ貝殻は20万tで全体の約半分を占める.貝殻の一部は,堆肥化などにより再資源化されるが,排出される貝殻の約半分は埋立処理される.近年では,埋立地不足,保管に関する法的整備の進行,環境問題に対する国民意識の高まり,資源循環型社会構築の必要性などから,貝殻を有効利用するための方策を検討することが緊急課題となっている.[*]そこで,貝殻を海底に敷設してデトリタス食性生物の生息場を創出し,生物的作用による水質・底質の悪化防止技術の確立に必要な基礎的調査を実施してきた.本論では,貝殻礁への生物蝟集効果について着目し,周辺の底生生物群集と比較を行い,その特性について検討した.[*]貝殻礁では,試験礁周辺に生息していない動物種(海藻などの葉上に付着する種や潮間帯の礫底などに生息する種等)による固有の生物相が形成された.そのため,貝殻礁設置は底生動物の生息場創出という点においては,周辺環境に生息していない底生生物の新規加入を可能にしたという特性が考えられた. |