【目的】乳牛糞尿を主原料として北海道内で稼働中のメタン発酵施設は、2006年5月時点で30基を数えるが、高温発酵で稼働している施設は3基のみである。一般に、高温発酵は水理学的平均滞留日数を短くできるため施設規模が同一であれば中温発酵より処理能力は高いが、温度変化に敏感であるため安定稼働が難しいと言われている。平成12年度に建設して稼働を続けている発酵容量1500m3の共同利用型大規模施設で2005年1月から3月の厳寒期に中温発酵から高温発酵へ移行させ、高温発酵での稼働状況を検証した。[*]【方法】発酵温度の制御プログラムの上限値を37℃から53℃に変更し、連続的な加温で発酵温度を上昇させた。滞留日数を短くすると消化液の貯留容量が逼迫してしまうため中温発酵と同じ30日(毎日の発酵原料の投入量は50m3)とした。中温発酵で実施している殺菌工程は行わないようにした。ガス量等の各種データを記録しエネルギー収支を解析した。[*]【結果】温度上昇開始後、53℃に到達するまで8日間を要した。この温度上昇期はメタン濃度は若干低下したがバイオガスの発生量は増加した。電力はほぼ自給したが、加温エネルギー需要に応えるために重油消費量は増加した。53℃に到達後11日間は(移行期)メタン濃度もガス発生量も大きく低下した。そのため電力も熱源もほぼ全量を外部エネルギーに依存した。移行期後は高温発酵が安定し、メタン濃度は中温発酵と同程度、ガス発生量は約1.3倍に増加した。そのためエネルギー収支は中温発酵より優位であった。 |