本研究は、コンクリート構造物の凍害に対する耐久性の照査・設計法の構築に向け、凍害劣化を定量的に評価する方法を開発・提案することを目的としている。耐久性を照査するには凍害の進行を時間を追って予測できるモデルが必要だが、未だ確立に至っていない。その根本的な理由の一つに、一般に広く普及しているJIS A 1148の凍結融解試験の結果と実構造物の劣化との関連性が不明確であることが挙げられる。現行のJIS A 1148は弾性係数の相対変化率から得られる耐久性指数で評価を行うのに対し、実構造物は凍害深さで劣化のグレードが評価される。環境の相違もさることながら、評価の内容が双方異なるため横並びで比較できないことが大きな障害になっている。凍害深さは室内試験と構造物調査で共通で使える指標ではあるが厳密な判定は難しく、試験法の規準化が望まれる。一方で、構造物の要求性能に及ぼす凍害の影響の明確化も重要であり、凍害深さのみならず凍害劣化の度合も無視できない。劣化の度合は凍害によって発生するひびわれの本数(密度)、幅、深さ等が影響すると考えられる。本論文では凍害劣化の定量的な評価手法に関する検討の一環としてひびわれ密度に着目し、凍害深さとひびわれ密度との関係、塩化物イオン拡散係数と鉄筋付着応力度に及ぼすひびわれ密度の影響について基礎的な検討を行った。その結果、ひびわれは合理的な評価の一指標になり得る可能性の一端が示された。 |