我が国の積雪寒冷地(積雪地域:2月の積雪深の最大値の累年平均が50cm以上の地域,寒冷地域:1月の平均気温の累年平均が0度以下の地域)に区分される地域は日本の国土面積の約60%を占め,そこには全人口の約20%の人が暮らしており,社会基盤整備を行う上で積雪寒冷地域の課題を克服することは重要である.積雪寒冷地域における道路舗装を考えると,低温,凍上,路面凍結といった特有の条件が存在し,これらによって舗装は機能が低下する.例えば,気温が極端に低下する地域では舗装体の温度収縮による温度応力ひび割れが発生し,走行性能の低下と支持力低下を引き起こす.凍上が発生すると路面が隆起してひび割れが発生し,さらに凍上した路床が融解すると大幅な支持力の低下をもたらす.また,路面が凍結してすべり摩擦抵抗が低下すると交通安全および社会活動上の大きな障壁となる.我が国では,このような積雪寒冷地特有の舗装の機能低下に対する技術が開発され,地域の条件にあった舗装材料や設計手法が用いられてきた.また,近年の厳しい経済状況の下で公共事業の一層のコスト縮減を図りつつ品質を確保するには,その地域の条件にあった技術を用い,規格(ローカルルール)を適切に設定することがより一層求められている.本論文では,積雪寒冷地における舗装の機能低下とその対策として,路床土の凍上対策を取り入れた車道および歩道舗装の設計手法,低温による温度応力ひび割れ対策工法,凍結融解作用等への抵抗性が高い表層材料などを紹介する.世界的に見れば,積雪寒冷地に相当する地域に多くの人口が居住しており,近年の発展が目覚しく今後の伸びも期待できる中国も国土の多くを積雪寒冷地が占めているなど,積雪寒冷地における舗装技術の必要性は大きく,日本の技術を世界に発信していくことが有益と考えられる. |