我が国は高度成長期(1960年~1980年)に数多くの橋梁を建設したことで、橋令が50年以上経過する橋梁数は2010年以降急激に増加するといわれている。このような橋梁を健全に供用し続けるためには、定期的な劣化度診断のもとに、適切な補修補強を実施することが必要不可欠である。しかしながら、河川橋梁や山岳橋梁あるいは長大橋梁の場合には、劣化度診断に多大な労力と時間、費用を要するため、定期的に実施することは困難である。[*]一方、橋梁全体の劣化度を診断する一つの方法として、固有振動特性の経年変化に着目した評価法が検討されている。この手法は定期的に固有振動特性や減衰定数を測定し、それらのデータを蓄積することによって、数年後あるいは地震発生後における振動特性をそれ以前に蓄積されたデータと比較することにより、経年劣化の程度や損傷の有無を適切に評価しようとするものである。[*]このような観点により、著書らは既往の研究で、鋼斜張橋やランガー橋等の種々の橋梁形式を対象に強制加振実験や常時微動観測を行い、その固有振動特性評価に関する検討を実施してきた。本研究では昭和42年に札幌市に建設された大規模曲線橋である無意根大橋の動的振動特性と健全性を把握することを目的に、強制加振実験および常時微動観測による固有振動特性の評価を試みた。本論文では、特に強制加振実験に関する概要を報告すると共に、当初設計図を基に作成した三次元有限要素モデルによる固有振動解析を実施し、補修補強時における固有振動特性を求め、強制加振実験結果と数値解析結果を比較することにより、現状における本橋梁の健全性についての検討を行った。常時微動観測に関しては、固有振動特性が数値解析と大略一致していることを確認している。 |