本研究では、コンクリート床版の耐久性向上を目的に施工されている防水工の効果把握のため、防水層の引張接着試験を実施した。[*]本研究からは以下の知見が得られた。1) 架設年次によらず、約85%の試験箇所で、引張接着強度が出ておらず、防水層の機能低下が懸念される。2)舗装材破壊は、舗装の損傷が顕著であり、表層と基層に付着がなく、水の浸透により基層部が劣化していたため、防水層の機能は低下していると考えられる。3)舗装と防水層の界面破壊は、接着強度の基準値以上の値を 示し、十分な防水機能を有している状態だといえる。防水材と床版の界面破壊は、施工当初から、鋼板と防水層の引張接着強度が低下している状態であった。4)コンクリート破壊は、床版上面が水の滞水により脆弱化していたと考えられ、施工時の床版は、湿潤状態だったと推測される。5) 試験なしは、橋梁に適した排水処理がなされていないことが、防水層の劣化の進行を加速させたものと考えられる。以上から、積雪寒冷地域である北海道においては、防水層の劣化メカニズムに凍害、経年劣化、などによる舗装の劣化・損傷が、大きく寄与している可能性がある。また、本試験では、全橋梁が塗膜系防水層であったため、他の防水材の機能についても確認する必要がある。以上により、既設橋梁の塗膜系防水層の機能低下は確認できたが、その劣化メカニズムまで言及できなかった。 |