本研究では、遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の危険度評価法について、実岩盤斜面への有効性を検討した。その結果、実岩盤斜面について採用した引張強さと単位体積重量では、実験パラメータの最も危険な状態となる切欠き高さおよび浸食深さにおいても、岩盤安全率Fps=54.5と大きな値を示していることから、この条件では実岩盤斜面は十分安全と評価された。また、経年的な風化などによる強度低下を想定した、当初引張強さの1/2、1/4 とした場合の関係においても、岩盤安全率はFps=10.0 以上を示し、十分大きな岩盤安全率を示したことから、実岩盤斜面は強度低下を考慮しても安定していると評価された。以上のことから、遠心力模型実験による岩盤斜面の危険度評価法は、岩盤斜面の安定性を評価する手法として有効であることが示唆されたと考える。[*]なお、3次元モデルによる遠心力模型実験による評価法は、想定した危険岩体の範囲や背面切欠き位置に対しての岩盤安全率を求めるものである。したがって、この岩盤安全率が現時点での岩盤斜面の岩盤安全率と必ず一致しているとは言えない。換言すると、遠心力模型実験で求められる岩盤安全率は、仮定した条件での値であり、これに対して岩盤斜面の現状、あるいは今後の経年変化を想定して適用することになる。このことから、今後は岩盤斜面の背面亀裂や強度などを把握する精度の高い調査手法が求められる。 |